人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「ウェブ進化論」の「玉石混淆(ぎょくせきこんこう:Wheat and Chaff)」的に、"石"とするか"玉"とするかはアナタ次第です。Appleネタと本で生きてます(笑)。雑記は別ブログあり。


by tacca884
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

[本] DNAのランプを点せ!:中堅崩壊

中堅崩壊―ミドルマネジメント再生への提言/野田稔

この本にある中堅の年齢層には少し足りない歳ではあるが、今社会人キャリアとしても10年になろうとし、技術者ながら末端でマネジメントもしている自分にとってはかなりジンとしみる内容となっている。

確かに中堅となるとかなり迷うところはある。キャリアアップするにもどうこれから進んでいくかを思う存分悩み、悩まされる時期。それでいて後輩もつき、育てていかなければならないし、上司からの期待も大きく、任される責任も大きくなる。ただでさえ忙しい時期だが、自分の中の仕事への熱い気持ちを奮い立たせて仕事に取り組む。それこそ日本のビジネスマンの中核、中堅の強さだった。そう、それは過去となろうとしている。

フラット化する組織構造に中堅の位置づけは微妙となり、また後輩が育ちにくくなる。結局誰の助けもなくプレイングマネージャとして一人責任を背負うが、その責任を全うするための人事や費用捻出のための権限は無く、孤独に耐え抜く。

その地獄を脱せないのは会社の運営方法に問題がある、上司が悪い、というのは簡単である。しかしそういっても何も解決はしない。自分が変わらなければ変わらない。誰かがやってくれるだろう、やってくれないからこうなってしまった、なんていう「くれない病」は自分のためにもならない。自分から動く。自分が動き、変化し、行動すれば周りも変わるのだ。もはや、中堅は中間管理職という名前をそのまま守って管理だけしていればいいわけではなく、自立し、想像し、組織・会社の変革の担い手になることが求められているのだ。

もちろん、自分で動けば良いというところもあるが、そこをヘルプできる仕組みを持っている会社はもっと素晴らしい。中堅の事情と重要性を知る優良企業ほどその仕組みに熱心に取り組む。それに甘んじるわけではなく、そのヘルプがあるからこそ、より大きく飛躍できる中堅が生まれ、会社を支えていく事になるわけだ。

この本にも「利他的」を象徴するような言葉がある。「トータルで工数が減るのであれば、僕たちの工数が増えてもいいよ」。全体最適を考え、自分達の主体的な行動で会社に貢献していくことである。また、他の人のために行動的に助ける人は他から見て「仕事ができる人」と見られることになる。そうなると他の人からのその人に対する「将来性」「優先度」が変化し、困った時に優先的に助けてくれる。それが仕事をうまく、早くこなすための良質なネットワークとなる。「利他的」行動はいずれ自分に良いものとなって帰ってくるのだ。

この本の中でのインタビュー、伊藤忠商事の会長丹羽宇一郎氏の言葉が面白く、そして期待される中堅に向けての象徴的なメッセージがある。
「DNAのランプが点灯するか否か」。それは死ぬまでいつ点灯するかわからない。多くの人は親からもらったDNAのランプを点灯させないで死んでしまう。それは寂しいことだから、DNAのランプがともるまで努力してほしい。

中堅という一番脂がのった時期でのDNAのランプ点灯は、とても強烈でパワフルなものになる。ランプを点すための火種は日々の努力と、仕事への熱い気持ちと、イノベーションである。目の前に落ちているのに見逃すわけにはいかない。自分が常識と思っている事から意識的に視点を変えれば必ず見つけられるのだ。
by tacca884 | 2008-04-19 23:58 |