「ウェブ進化論」の「玉石混淆(ぎょくせきこんこう:Wheat and Chaff)」的に、"石"とするか"玉"とするかはアナタ次第です。Appleネタと本で生きてます(笑)。雑記は別ブログあり。


by tacca884
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[本] "当たり前"の戦略:「アップルの法則」

アップルの法則/林信行

iPhoneショック」で楽しく面白く読ませていただいた林信行さんの新刊。今回はアップル全体の戦略と、歴史(過去の衰退と復活劇)を交えて書かれている。

うむ、やはり知っている内容が多かったのは否めない。まあ、僕がアップル関連の書籍を色々読んでいるせいもあるのだが。という意味だと取り立てて新しいところは少ない。内容にはここ最近の製品のことが反映されているので、そこはアップデートという感じか。

でも、何度読んでもアップルやスティーブジョブズの持っているブレない軸は面白い。どうしてもモノづくりの中で忘れてしまいそうな大事なことを読むごとに思い出させてもらえる。

この本の中にもあるのだが、多くの企業は市場調査による他社製品のベンチマークにより、他社よりちょっと良い製品、ちょっと安い製品、機能をいくつか追加した製品の作り方であるところ。これは耳が痛い。この繰り返しが業界をコモディティ化させる。そしてその過剰な争いがいわゆる「レッドオーシャン」、血の海での戦いとなり体力を失っていく。そこで革新的な製品を作り、急成長する第三勢力が業界の風通しを良くするわけだ。それこそ、アップルでいうところのiPod。iPodが出る前のデジタルオーディオの伸び悩みを見れば明らかであろう。

強力な魅力を放つ製品は業界構造をも崩す。通常、携帯電話はキャリアと呼ばれる通信事業会社にお願いして売ってもらうというビジネススタイルだが、iPhoneの場合にはキャリア側からiPhoneを売らせてほしいと言わしめるほど魅力的である。そのためにいくらかのコストがアップルに対して発生しようとも、企業イメージ、顧客の縛り付けという点でメリットは大きい。

iPod、iPhoneの他に最近で面白いのはムービーレンタル。映画のデジタルデータをiTunes Storeからダウンロードして閲覧。一度見ると24時間で自動消去されるというもの。これは何千円も出して何度観るか分からないDVDよりも安価で手軽。映画会社にしてみれば、アップルはDVD発売一ヶ月後に配信を始めることと、著作権保護技術と24時間消去を約束しているので自分の本業は侵されず新しい収益モデルとなる。アップルはその売れた映画の代金の一部をいただくし、さらにiPod、AppleTVへ顧客を向かせることができる。DVD、ブルーレイなどのメディアを排し、物品に頼らない流通システムのためコストを下げてビジネスを行えるわけで、最終的には自分、顧客、配給元全てに勝ちモデルをもたらす。DVDやブルーレイのライバルとなるのに、その規格を支持する会社もムービーレンタルに参加しているのだから面白い。敵視して戦いを挑むより、うまく住み分けることがアップルへの唯一の対抗なのだから、アップルの強靭なビジネスモデルはとても魅力的なのだ。

とにかくアップルは「自分たちの欲しいものはみんな欲しいもの」として、あるべき姿を本質的に考える。会社の都合や顧客を無視した利己的な戦略は結局いびつで分かりにくいものとなり顧客は離れていく。人の顔色ばかり見ている商品ほど浅ましく魅力の無いものはない。シンプルに、わかりやすく、スマートに。贅肉のように余計な機能など付いてないものが美しい。それは人間の放つ魅力と同じなのではないだろうか。アップルの製品は友人のように、恋人のようにいつも側に居てほしい、愛せる製品になっているように私は思う。

最後にこの本でも取り上げられている、スティーブジョブズのスタンフォード大学での卒業式のスピーチの内容へのリンクを添付しておく。
「Stay Hungry. Stay Foolish.」そう、誰にどう言われても。本質を求めよう。

スタンフォード大学のサイトにある原稿(英文)
※ググれば日本語訳はどこかで手に入れることはできますが、あえて添付しません。
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by tacca884 | 2008-04-21 23:09 |