「ウェブ進化論」の「玉石混淆(ぎょくせきこんこう:Wheat and Chaff)」的に、"石"とするか"玉"とするかはアナタ次第です。Appleネタと本で生きてます(笑)。雑記は別ブログあり。


by tacca884
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[本] 足し算の松下・引き算のジョブズ:ジョブズ VS. 松下幸之助

ジョブズ VS. 松下幸之助 ”言葉力”で人を動かす/竹内一正

ジョブズ関連の本を久々に。この本は日本の代表的なカリスマ性のある松下電器の松下幸之助とシリコンバレーで現役で革新的なエレクトロニクス製品やサービスを出し続けるアップルのスティーブ・ジョブズを比較している。と、いっても好対象というよりはスタンスの違いはあるにしても「似た者同士」という感じではある。

決定的な違いは幸之助が「足し算の経営」であり、ジョブズが「引き算の経営」であるということ。幸之助は社員を信じて任せてやる気を出させる。そして他の会社で優秀な人がいれば引き抜きを行う。敵をも味方にする。ジョブズの場合は、高い目標を掲げ、凄腕の腕自慢を集めては議論し火花を散らす。そして自分の邪魔ものはバッサリと切り捨てる。味方をも敵にする。一見、幸之助の方が良いようにも思うが、自分に自信がある人にとってはジョブズを説得できれば最強の味方となる。幸之助は社員の潜在的な能力を引き出し、成長させる親のような存在である。

しかし、幸之助も非常にエモーショナルであり、怒鳴りつけることはあった。しかし幸之助の場合にはその怒鳴りつけた後のフォローが素晴らしい。まるで何事もなかったように激励をしてくれる。ある意味幸之助の(言い方は悪いが)ツンデレな行動が社員の気持ちの引き締めと元気付けとなり、松下電器の優秀な社員として育っていくのではないだろうか。

では二人に共通するのは何か?それは無理なことであっても諦めない、強い気持ちとこだわり、そして何よりも製品を買ってくれるお客様が本当に何を欲しがっているのかを完全に読んでいるセンスである。そして、ただお金儲けで経営をしているわけではなく、自分たちが作り出す商品でお客様がどれだけ喜んで買ってくれるか、自分の思いをやり遂げるかに重きが置かれている。そのため、松下電器もアップルも、出す商品には経営トップから現場社員までの商品に対するこだわり、愛が込められて生産されてお客様に届く。

これを示す幸之助の素敵さがわかるエピソードもある。商品の数値だけを持っている経営幹部に対して、「客がこの製品を使う時にはこんなふうに使うわけだ」と、一切スペックの数字は聴かず、経営幹部に「さあ、君もやってみるかね」と商品を触らせる。企業のトップでありながらお客様の位置まで降りて自分でやってみて良い悪いを判断する。単なる儲けるためのものと考えてないからこのような言葉が出てくるのだ。

こんな熱さを持って商品開発を行っている会社はそんなに多くはないだろう。ちょっと会社が傾けば、どこかから頭でっかちな経営者だけを連れて来て改善をする。確かに一時的にはそれで改善はするだろう。ではその経営陣は商品に対する熱い気持ち、こだわりは持てるだろうか?そこを単なる儲かる駒としか考えないのであれば、いずれ会社の状態は悪くなってくると私は思っている。

アップル好きでジョブズに興味があって読んだ本だが、自分が日本人であり、日本的な企業に慣れているせいか、松下幸之助の行動や言動の方が自分の中にはしっくりきた。多分自分がある種のプロフェッショナルで一人で何でも出来るタイプならジョブズの方に共感できたかもしれない。今まで凄いと聴いていてもあまり深く知って来なかった松下幸之助ではあったが、今回は松下幸之助のお話ですっかり彼の魅力に取り込まれてしまった。

とにかく二人とも自分の人生を大切にして、自分として生きている。僕がジョブズや松下幸之助のようになれるかどうかはわからないが、二人から学べる示された方向性は大いに自分の人生を有益してもらえるヒントとなった。

ジョブズ VS. 松下幸之助 ”言葉力”で人を動かす (アスキー新書) (アスキー新書)
ジョブズ VS. 松下幸之助 ”言葉力”で人を動かす





【More:メモ書き】
・天才だから偉業を成し遂げるのではなく、偉業を成し遂げた人を天才と称する
・口で大丈夫と言ってもわかってもらえないなら実際使ってもらおう
・時間をどう活用できるかは「時間の量」ではなく本人の意識
・未来を予見するには、それを発明すればよい
・Mac、Windowsの「OS宗教戦争」の壁を超えることができたiPod
・水のように安く大量に生産し、提供することでこの世から貧困を無くし人々を幸福にできる
・幸之助もジョブズも事業の先のゴールはお金ではない
・起業の理由は周囲を驚嘆させるようなものではなく、小さな動機から
・ダメだったときの逃げ場を持つ、自分を追い込まないでおく心の安全弁
・やりたいと思っていることだけが成功の道ではない。やれることをやっていればやりたかったことができるチャンスに巡り会える
・幸之助もジョブズも多くの失敗をしている。大事なことは失敗で止めてしまわないこと。諦めず立ち上がったからこそ今の成功に辿り着いた
・幸之助は信じて任せてやる気を引き出す、敵をも味方にする(足し算の経営)。ジョブズは高い目標を掲げ、集まる腕自慢と軋轢を恐れず火花を散らす、味方さえも敵にしてしまう(引き算の経営)
・不景気に松下は、人を切らなかった。せっかく成長させた社員を解雇したら、再び成長するときに時間を費用を使ってしまう。その方が高くつくと考えた
・何が何でもやり遂げると決心すれば、できる。必ず作れるという確信を持つか持たないかがそのポイントだ。僕は君たちがやり遂げるのを信じる。だから断じてやりたまえ
・朝日乾電池の高橋荒太郎。経営がうまく行かなかった責任は自分にあるから取締役を辞任。しかし辞任しただけではなく主任となり工場の再建を行う
・曲を出すのに三回もボタンを押すなんてダメだ!
・「客がこの製品を使う時にはこんなふうに使うわけだ」。一切スペックの数字は聴かず、経営幹部にコーヒーポッドを差し出す。「さあ、君もやってみるかね」
・松下電器は、ものを作る前に、人を作る会社です
・「そもそも日本列島は鬼門から裏鬼門に伸びとる。そんなこと気にしとったら日本から出ていかなあかん」
・現実歪曲フィールド。常識ではできっこない現実を、できると思わせるジョブズ流
・販売目標の数字を聴いた時には「そんなバカな」と思った。なのに、二ヶ月もすると自分でも同じことを言いはじめ、信じるようになってしまう
・壁があるのは理由がある。自分自身がその夢に対してどれだけ強い思いを抱いているかを証明するために「壁」は存在している(最後の授業より)
・昨日はあんなに叱られたのに翌日には激励
・演技とは意識して行うもの。怒る、怒鳴るは演技ではなく感情。しかしその後のフォローは感情に流されっぱなしではダメで意識しないとできない。人にやる気を起こすには演技が必要だ
・あらゆる歴史書が勝者によって書かれている。負けたものの歴史は勝ったものの手で作り替えられるものだ
・君、血の出るクビやで!
・感情にまかせて怒鳴るのはジョブズも幸之助も同じ。幸之助は怒鳴った後は気持ちをガラリと変えてフォローする。ジョブズはビシビシ部下の能力を引き出すやり方。
・地球の人口は何人や?みんな違った顔してるわな。同じような大きさの中で部品も同じやけど、顔はみんな違うで。神さんはうまいことデザインしはるな
・労働組合が出来たことは喜ばしく、経営側と組合は一緒に協力して進んでいきましょう
・スカリーはシリコンバレーを去り、ドン・エストリッジはこの世になく、ビルゲイツは現役を引退し、ジョブズだけが輝いている。ボクシングの試合に勝ちたければ、最後までリングに立ち続けることだ
・販売店や代理店のたまりにたまった不満が出尽くしたところで、壇上に立ち続けた幸之助は頭を下げて詫びた。「全ての責任は松下電器にありました」
・世阿弥の言葉「離見の見」。演じている役者は自分で演じている姿を見ることは出来ないが、客観的に自分を見ることが出来てこそ、本当に素晴らしい演技ができる。
・ソニーは100点、しかし、VHSは150点。幸之助はソニーのここが悪いなどとけなさず、満点の100点を褒める。さらに満点以上をつけてその努力を大いに称えるスタンスがまさに「足し算」の言葉力
・点と点が自分の将来のどこかで必ずつながると信じることが大切だ
・君たちの時間は限られている。だから、他人の人生を生きて自分の人生をムダにする暇などない
・ジョブズも幸之助も自分の人生を生きている。どこかの誰かと入れ替わっても大差ない人生ではなく、唯一無にの人生に生きてきた
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by tacca884 | 2009-01-21 02:50 |