人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「ウェブ進化論」の「玉石混淆(ぎょくせきこんこう:Wheat and Chaff)」的に、"石"とするか"玉"とするかはアナタ次第です。Appleネタと本で生きてます(笑)。雑記は別ブログあり。


by tacca884
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

[本] 資格じゃない、学位である:間違いだらけのMBA

間違いだらけのMBA/喜多元宏

以前、「おもてなしの経営学」を読んでいて、著者の中島さんが今になってMBAを取り始めたというのがあった。それでちょっと興味があったので「MBA」ってなんぞや?と思い、この本を手に取る。

この本、一見「間違いだらけ」とあるので、MBA自体への批判が多いのかと思いきや、かなり正しくMBAを伝えようという気持ちが文章から溢れていて非常に好感が持てます。それにMBAのことだけじゃなく、大学の学位とは?学問とは?という学ぶことについての本質も書いてくれており、自分が知らなかったことも多かった。こういうことをもっと早くから知っていて大学で勉強をしていれば、ちょっとは今の自分はマシになったんじゃないかなと思う。

というか、MBAは資格ではなく学位であるとか、日本のMBAは海外じゃ相手にされてないとか、本当知らないことばかりでした。普通に学生のままでMBAを取るという人より、ある程度社会に出て社会人をした人が、改めて大学に行って学位を取る、という方が多いらしい。しかし、MBAホルダーとして企業から相手にしてもらうには、アメリカや欧州にある有名校でMBAを取る必要がある。日本人で、社会人でMBAを取りたいって話だと仕事を辞め、海外に留学するという手を使うことになる。もちろん授業は英語。かなりハードルは高い。

かといって得るものは日本の企業ではあまりMBAホルダーでも活かしてもらえないらしい。まあ、資格みたいに学位取っていると認識が日本では多く、日本企業の理解が弱いんじゃなかなかね・・・。MBAまで取ったなら海外でそのまま働くってのがキャリア的には正攻法かもしれません。

日本でAACSBという米国の機関に認可されているMBAの取れる大学は、慶応義塾と名古屋商科大学だけだそうで、最近では日本に進出した海外のビジネススクール(例:ウェールズ大学。著者がディレクターをしている)でも海外のMBAが取れる。日本にいながらMBAを取ることも出来るので社会人が仕事をしながら、夜や土日を使って勉強する・・・これ、かなりハードですよ。いやあ、海外留学するにも、日本で仕事しながらでも、そうとうタフじゃないとね。多分、自分の目指す位置が何年も先を見ている人で、費用対効果を考えながらストイックに取り組めないとなかなか厳しいようです。

しかし、MBAってスペシャリストではなく、ジェネラリストなんですね。あらゆる経営に関わる知識を横断的に知っていることが必要で、頭でっかちではなく、常にアイディア溢れ、柔軟に、タフに、利益をどう得るかということを練りに練り込む仕事をすることになるので、企業経営をする上で実践的なスキルだなと。なんとなく思ったのは、「おもてなしの経営学」のスーツとギークの話にもあるけど、ギークがスーツを目指し経営者になる上でMBAは登竜門となるのだろう。最初からスーツでスーツらしくMBAだけ持ってて、現場や技術のイノベーションを知らないで経営を語られても、ギークはついてこないだろう。ギークがスーツのスキルを持ち、経営だけではなく製品やテクノロジーというさらに広い視野で、鳥瞰的に経営を見つめ、製品やサービスを出していくとなれば、その企業は経営の上で、揺るぎなく強い方向性を打ち出せる力を持つのではないかと思います。

最近では中国などのアジア圏でのMBA取得もあるそうです。そしてアジアの人からは日本のMBAは相手にされてないという悲しい事実もあるそうです。一体、日本ってどんな教育をしているんでしょうか・・・。

最後にこの本はMBAを知りたいとか取りたいとか、そういうためだけに読むのはもったいないくらい色々な良い言葉が入ってます。MBA自体がモチベーション高く、妥協を許さない強いビジネスマンを目指す上では取っておきたい学位ではある。ただ、MBA学位の取得にこだわらずとも、ビジネスマンとしてあるべき姿のスキルとして、ノウハウはこの中にたくさんつまっているのではないかと思います。
by tacca884 | 2008-04-10 23:03 |