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「ウェブ進化論」の「玉石混淆(ぎょくせきこんこう:Wheat and Chaff)」的に、"石"とするか"玉"とするかはアナタ次第です。Appleネタと本で生きてます(笑)。雑記は別ブログあり。


by tacca884
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[本] メタデータで万人にご利益を:ウェブは菩薩である

ウェブは菩薩である
ウェブは菩薩である/深見嘉明

メタデータとは「データの」データ。はてなブックマークなどのソーシャルブックマークやブログにつけるタグと呼ばれるもの、ブログのコメントもそう。デジタルカメラで写真を撮った時のExifのデータも画像データにつけられたデータである。これらは様々な属性を持っており、それによってデータを分類できる。

今のインターネットの世界、無数の情報が溢れて求めるものを探せない状態の中、グーグルでの検索やアマゾンでのオススメなど、人間がウェブを使う上で自分の欲しいモノ、求めているモノを引き当てるための「とっかかり」となるのがメタデータである。

ウェブの世界では、「データ」が持つメタデータから分析されて、自動的に分類されるものもあれば、そのデータをウェブの世界に置く時にデータの持ち主によって付けられるものもある。当然自動化されることの方が楽であり、人間の持つ認識の「ブレ」の部分を無くして論理的に正しく分類することができる。

しかし、人間が付ける特殊なメタデータによって、逆に面白いモノ、興味深いモノ、流行となるモノが収集され、爆発的に広がっていくこともある。この本で例として挙げているのが、YouTubeなどの画像共有サイトのタグでつけられる「演奏してみた」や、素人が何の見返りも考えずかなり高いクオリティで作り込んだ作品にたいしてつけられる「才能の無駄遣い」である。このタグのメタデータを元にして動画や写真を探せば、ウェブの世界での流行がよくわかり、面白い情報に辿り着けるわけだ。新しい分類を生み出していると言える。

また、アマゾンなどでは商品に対する評価もメタデータとして持つことになる。当然評価が悪くなれば、商品へのユーザからの引きは悪くなる。メタデータはウェブ上で人間によるバイアスを避けて平等にデータを扱うことができる一つの手段である。

ウェブの世界でデータを出すというのはセキュリティの面も考えなければならない。しかし、ウェブの世界は先のメタデータによる最適化、情報到達の利便性の向上が成されているわけであり、自分自身の持つ情報もウェブ上でメタデータとして流れることで、他のウェブユーザへ恩恵をもたらすことが出来る。当然自分も他のユーザのメタデータによって恩恵を受けているわけであり、ウェブの世界では、もらいっぱなしでは実は淘汰されていく。逆に自分から情報をギブしていくことの方が、自分にもっと質の良い情報が集まってくるのが定説のようだ。

この本のタイトルの一部である興味深い「菩薩」という言葉の意味は本の最後で語られることになるが、正直そこまで大げさに言わなくてもいいのかなというところはある。そしてまだウェブの世界は菩薩様のように優しいものではまだ無い。ウェブによって与えられた平等さや自由さを扱って、好きなことをするためにはまだウェブの世界はサバンナだ。不用意に迷い込んでしまうと痛い目に会う。万人のものになるための状況はまだ、水道や電気やテレビのようなレベルではない。ただ、それら同等もしくは超える素質は充分にあり、今それに向かいつつある。さらなるウェブの利点の理解が多くの人間になされ、欠点をも学んで(経験して)把握した上であれば菩薩様にはなるだろうと思う。
by tacca884 | 2008-08-27 23:58 |