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「ウェブ進化論」の「玉石混淆(ぎょくせきこんこう:Wheat and Chaff)」的に、"石"とするか"玉"とするかはアナタ次第です。Appleネタと本で生きてます(笑)。雑記は別ブログあり。


by tacca884
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[本] 収益を最大化せよ:コーヒーとサンドイッチの法則

コーヒーとサンドイッチの法則/竹内正浩

タイトルにちょっと惹かれて読んでみました。ようはこの本のタイトルの言いたいことは「コーヒー屋はコーヒーだけ売ってても利益は最大化しないよ」ということ。持っている資源は最大限利用し、それを利益に繋げること。最近の経済危機を考えるとそれは非常に大事なことである。

スターバックスはコーヒー以外にもサンドイッチなども売っている。スターバックスはコーヒーを楽しむお客様に最高の空間を提供できるよう店舗の内装、音楽、従業員の対応などについて徹底したこだわりを持っている。同時にそのこだわりはコストを高める要因にもなる。スターバックスの持つ味や方針を維持しつつ利益を最大化するには、そのくつろいだ空間でコーヒーと一緒に食すだろうサンドイッチなどのサブの食材を置くことである。スターバックスはコーヒーを美味しく飲んでもらうため、それに沿わないことは徹底してやらないという企業だというのを読んだことがある。しかし、やはり企業でありコーヒー以外から得られる収益というのもバカにできない。彼らのことだ、コーヒーに合うメニューをちゃんと用意している。資源の再利用という意味ではコーヒーを入れる為に導入している機材はサンドイッチなどを用意する上では大きなコスト追加をせずとも追加可能なものであったわけだ。それは流通の仕組みも含まれているだろう。

ちなみに上に書いたようなコーヒーとサンドイッチの話は後半に資源を最大に利用して収益を最大化させる話題にのみ使われており、全般的に本を読んでもほとんど出て来ない。しかしこの本のキーとなるのはまさしくここの部分である。それはホテル業界が宿泊だけの収益ではなく宴会やパーティーによる収入、さらにはホテル経営のマネジメントなどでも収益を得ている。また、ハンバーガー屋に関してもハンバーガーのみの売り上げではなく、ポテトやドリングなどからも大きく利益を得ているということを忘れてはいけない。ハンバーガー屋のセットはお客にとって割引がありお得感があるが、実はお店にとってもセットでポテトやドリングが出る方が収益率が高い(原価が安い)のである。

一番言いたいところはそこではあるが、前半にある「お客様は神様である、は勘違い」というところも面白い。全てのお客が利益を出してくれているとは限らない。クレームをつけたり、値段を安く買いたたいたりするお客は実は元が取れてない場合がある。そういう場合でもお客との関係性をうまく変えたりして利益に繋げていく努力は必要である。しかしそれでも金にならないお客は最終的にはお客を"クビ"にするのだ。

さらに新規顧客の開拓は大変コストがかかる。それよりは現状いる既存顧客を活かすことで利益は変わってくる。既存顧客は値段は高く買ってくれるし、訪問や説明を多くせずとも商品を理解してくれる。コストがかからないのである。そのため既存顧客を引き止める上でロイヤルティを用意したり顧客満足度を上げようと頑張るのである。携帯電話会社が新規顧客を獲得数でよく競争していたが、もっとコストがかからないのは既存顧客を満足させ自分の会社が提供するサービスを利用し、商品を買ってもらうように努力する必要がある。ナンバーポータビリティで新規顧客を多く得たKDDIは今後はその顧客をどう引き止めておくかが大事なところである。

また、本の終わりの方ではキャッシュフロー戦略について言及している。黒字倒産があるのはキャッシュフローが悪いからであり、赤字でもキャッシュフローが良ければ倒産はしない。いかに必要なときに使える現金を手元に持つかが大事であり、在庫を最小限に抑え、支払いを延ばし、売上債権を早く回収して現金にすることがキャッシュフローを良くする方法である。

本のタイトルの部分は本の一部の章ではあったが、全般的に、資源を最大に活かしてコストをかけないようにすることという一つの大きな流れがある。よくよく考えれば当たり前のことなのかもしれないが、それを改めて教えてもらった本である。

コーヒーとサンドイッチの法則
コーヒーとサンドイッチの法則







【More:メモ書き】
コーヒーとサンドイッチの法則 竹内正浩
・顧客の収益性。お客様は神様の勘違い
・個別の顧客の収益性は企業は把握できていない
・損する顧客を儲かる顧客へ。プロセスの改善、関係性の変化、価格の変更
・最後にすべきこと・・・顧客をクビにする
・満足している顧客の特徴。何度も購入してくれる、購入価格が高い、時間経過とともにコスト低下、他の見込み客を紹介
・既存顧客の維持は、新規顧客獲得の5分の1のコスト
・顧客維持率を高める方法。顧客満足、ロイヤルティ、スイッチングコスト、失った顧客を取り戻す
・離反理由を明らかにし、離反理由に対処し、各種の提案をして取り戻す
・選択肢が3つあれば真ん中が一番安全そうにみえる
・効果的な製品ラインの構築。顧客ニーズの分析、産業全体の製品ラインの分析、経営戦略とのフィット、収益シミュレーション
・コーヒーとサンドイッチの法則。スターバックスのコンセプトを維持して、いかにして売り上げを最大化するか
・範囲の経済。複数の財・サービスを生産する総費用が単一企業が個々に提供する場合より小さい
・もってる資源は寝かせるな
・範囲の経済の効果。売り上げの増加、コスト・リスク低下、収益源化までの期間短縮
・内向きの資源。不動産やブランド、知的財産
・外向きの資源。販売組織、流通チャネル
・ホテルの収益源。マネジメント契約
・医薬品メーカー。開発した医薬品が別の効果・効能が無いかを調査
・ハンバーガー屋だからといってハンバーガーで儲けているとは限らない
・自分の考えていることと、顧客の考えていることは必ずしも一致しない
・顧客は、自分のその製品だけ欲しいとは限らない
・カード会社。最大の収入源は金利収入
・シティホテル業界。客室収入だけではなくレストラン・宴会収入が経営上重要
・ソフトウェア業界。サポートやコンサルティングの収入
・ビジネスの世界では現金はすぐに受け取れるとは限らない
・キャッシュフローの悪化。倒産のリスク増大、利益を生まない仕事の増加、資金調達コスト増加
・キャッシュフローが悪化すると仕事はあるが儲かっていないという状況になりやすい
・キャッシュフローをよくする方法。キャッシュフローの第一原則、バーター、フロート
・キャッシュフローの第一原則。在庫を最小限に抑え、支払いを延ばし、売上債権を早く回収して現金化せよ
・労働サービスに対するバーター。ストックオプション
・フロート。自社のお金ではないが一時的に持っている滞留資金。保険業界では一般的
・フロートの影響。無コストの資金調達、滞留資金の運用による運用益
・フロートが意図的に組み込まれた商品。スポーツクラブの年間一括払い
・誰かが成功するとそれに伴って利益を得る人がいる。自分の成功に伴って利益を得る人を見つけると、自分ももっと成功できる
・戦略的提携を最大限にする方向性。競争優位性、コスト削減、売り上げ増加、信頼性の獲得
・ビルゲイツ25歳の中小企業だったマイクロソフトはIBMと取引することで信頼性を獲得
by tacca884 | 2009-01-05 00:25 |