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「ウェブ進化論」の「玉石混淆(ぎょくせきこんこう:Wheat and Chaff)」的に、"石"とするか"玉"とするかはアナタ次第です。Appleネタと本で生きてます(笑)。雑記は別ブログあり。


by tacca884
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[本] スペシャリティになるために:断る力

断る力/勝間和代

勝間さんの新書が出ました!なかなか読んでも書評が書く時間が取れず(言い訳でしかないですが)書かせていただきます。今回は断る力。アサーティブとも本の中で表現されています。この断る力というのは勝間さんのパワーの大本になっている力かと。なんか単純に断る力というと、強引さとか非協力的なイメージが先に立ってしまいますが、そういう視点ではなく、いかに自分のやるべきことに集中するために、相手に多少は嫌われてしまうかもしれないけど、気持ちよく断って自分の人生、そして周りの人を大切にするかというところが大きなところです。

この本の中でショックを受けたのは、何でもかんでも引き受けてしまい自分というものを知らない間に失ってしまうと「コモディティ」つまり「コスト換算される代替可能なもの」となってしまうということ。つまり、要らなくなったりすれば捨てられるし、何か断ろうとすると他のものと替えられてしまう。そこで自分の考えを持ち、自分で判断して、他人を納得させられるくらいの力を持てば何でもかんでも頼まれず、かつ、代替の利かない特別な存在である「スペシャリティ」になることができる。ある意味、断ることへの勇気、断れるくらいのバックグラウンドを自分に作り上げなければ成し遂げられないことであり、また、スペシャリティになることによってさらに断る力が成長していくという効果がある。こう書くと「断る力」と「スペシャリティ」には鶏と卵な関係が見えてしまうが、ある程度リスクを許容し苦労をして、「断る力」が成り立つ領域まで行かないといけない。簡単にはいけないところではあるが、どの努力の先にはスペシャリティな自分が待っているということだ。

しかし断るということに対して誰しもが心配することがある。それは「人に嫌われる」ということ。しかし案外人に嫌われることはたいしたことではない。全ての人間に好かれることなど不可能なのだから。嫌われる人、自分に合わない人を感情的にとらえるのは得策ではない。そこにはそういう構造があると認識するしかない。嫌われていることを解決するために力をかけるのかどうか?はコスト対効果と同じで、意味があればすれば良い話なのだ。むしろ、嫌われる人がいても、自分のファンを持てば良い。断れること、言いたいことを言える人だからこそ、ファンがついてくれるのだ。

断る力によって嫌われることによる割り切りを持つと、自分にリスクを課すことになる。しかしその分、自分のやるべき本当のことが成し遂げやすくなる。つまり成功する可能性が高くなるのだ。出来るだけリスクを取らないリスク・ミニマイズな生き方だと思考停止に陥り、人にコントロールされる人生となる。そんな人生は楽しくはない。リスクは持つがリターンが大きければ人生はハッピーになれる、リターン・マキシマイズな生き方、それが断る力をつけることである。

断る力を十分発揮するには、それを活かすための戦略を自分の中で持つ必要がある。自分の得意分野は何か?不得意分野は(自分以外で)どう補うか?断る上での理論的な理由とは?圧倒的な事実・証拠は?そして断るなりにそれに対する代替案の提案とは?・・・この辺をしっかりと持っておくことが重要となる。断る力を持つことは楽なことでないが、十分に活用できれば自分のためになる大きな力である。

断る事とは、実は「思いやり」「誠意」である。お互いが対等であり、そして発言・行動に責任を持てるからこそ断れるのである。

断る力 (文春新書)
断る力




【More:メモ書き】
・「To Do List」を作ることではなく、「Not TO Do List」を作ること
・コモディティ(規格が決まっているもの。人材で言えば汎用的な人材であること)から抜け出せる実力がついたのは、「断ること」で自分に時間を使うようになってから
・断っていても出まくっている印象が強いのは、引き受けたものに対して出来る限りの効果を作るべく、努力をするため
・「断る力」とは「自己主張をする力」
・断るという選択肢を無視することは、思考停止状態と置き換えてもよい
・事実なんてない。あるのは認識だけだ
・相手が読心術を持つエスパーではない限り、あなたが言葉を使って言わなければ絶対わからない
・アサーティブの考え方。誠実、率直、対等、自己責任
・努力が成果に結びつくことを信じる人×自分の評価の軸がある人
・「断る」、すなわち、自分の考え方の軸で評価し取捨選択することを恐れ、周りの同調圧力に合わせているだけでは、コモディティは抜け出せない時代
・コモディティとスペシャリティ。コモディティはコスト勘定されるが、スペシャリティは投資勘定として処理される
・必要以上に相手を不快にすることはない
・全ての人に好かれる必要は無い
・一人一人が業務の固着化のリスクを防ぎ、あるいは日常でのちょっとした仕事のプロシジャーでの非効率化を防ぐために、命じられた仕事、与えられた手順が本当に合目的なのか、疑い、考え、そうでなければ断り、その上で代替案を示す習慣漬けしていく必要がある
・断らないことは、あなたに何のメリットがあるでしょうか?
・相手から頼りにされているという価値判断の中で麻薬のようになり、不法行為があっても抜け出せなくなる
・推奨者の正味比率(NPS Net Promoters Score)
・スペシャリティな人、それはNPSが高い人
・嫉妬と断る力は裏表。「依存心が強い人」は「嫉妬心が強い人」だから
・嫉妬されるくらいの人になる
・リスクミニマイズ戦略とリターンマキシマイズ戦略
・「断る力」をつけるためには、「嫌われることに対する割り切り」が必要
・嫌われている問題に対して、「その問題は、労力やコストを使って解決すべき問題なのか」を判断すること
・自分と相手とは合わない関係性=構造である
・言いたいことを言うからこそ、多くのファンがいる
・私たちが相手からどのように対応してほしいか、取り扱って欲しいかは、私たちの言動が相手におしえている
・相手との関係性を健全に保つには「対等な人間関係」が前提
・自分に対して責任を全て持てるのは、自分一人だけ
・相手を理解する努力をした上で、こちらが直せることは直し、それ以降はほうっておくこと
・何か対立が生じてしまったときには、「圧倒的な事実」「圧倒的な証拠」が私たちの味方になる
・大きな業績を残して来た人は例外なく「I'm right. You are also right」である
・自分の得意・不得意を明文化する
・努力は使った時間配分量。あらゆる人に一日24時間平等に与えられた時間という資源をどのくらい、集中して「配分」するか
・ファンの人が何を考えているか、を捕捉することは大事だが、ファン以外の人が何を考えているかも労力を使いながら情報収集する必要がある。またファンとファン以外になる変化値を客観的に知ることで自分に起きている変化に気づくことができる
・「自分を知る」とき「ノイズ」に惑わされずに、「自分の価値」を自分で見抜かなければならない
・不得意分野への対処法。ちょっとした努力で向上できる範囲においては改善を心がけるが、あまり時間を使わないようにする、あるいは意図的に放っておく
・転職市場では、発展途上の人材を採用する上限年齢は35歳
・「空気」を読んだ上で、その空気とは違うことをあえて言い切る勇気を持つ
・ストレスを上手にコントロールして生きるには、自分の努力が成果として現れてしかも周りが感謝する、自分の自尊心も満たされるという好循環が必要
・上司はあまり深く考えず、あるいは考えられずに指示を出している。上司の多くが無能になるかについて「ピーターの法則」
・主体性を持つということは、相手と「協力関係」を築く
・相手が出してきた要求や条件に対して、何でも即座に「ハイ」と返答するのではなく、まずはいったん「より良い方法はないか」と考える癖をつける
・「私たちがしたいこと」×「相手がそれによって利益を得ること」をすりあわせるインセンティブの調整を行うのが交渉のプロセス
・断る場合には、なぜ提案を一度は断るのかということについてのしっかりした説明、位置づけを注意深く行った上で、こうした方がよりお互いにとってもプラスになるという代替案を提示する
・断ること、適切な自己主張をすることによる成功体験を積み重ねること
・「自分の軸」を持った人同士が組み合わさって「得意分野」を出し合い、「不得意分野」を補い合う
・自分の軸を大事にしていくことで、自分が自分であるためにはどうすればよいか、相手の一番いいところを活用するためにはどうしたらいいか、というお互いの思いやりが習慣として根付いていくことになる
・少人数のチームにおいて、過度な同調性を発揮するよりは、一人一人が自分達の長所・短所をきっぱりと断る力という形で活かし切り、それに応じて互いが切磋琢磨した方が、生産性が何倍にもなる。
by tacca884 | 2009-03-11 02:12 |